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バセドウ病眼症・甲状腺眼症の
特効薬!?
今後発売されるテツプツムマブとはどんな薬なのか
いま世界的に甲状腺眼症の治療の話題になっているテツロツムマブ(商品名テペッツァ)ですが、日本での発売が年内に予定されているようです。
この薬剤について解説しましたのでご参考になれば幸いです!
テツロツムマブとは
テプロツマブ(Teprotumumab)は、バセドウ病に付随する眼窩(がんか)炎症性疾患であるに対する甲状腺眼症(バセドウ病眼症;Thyroid Eye Disease TED)への治療薬として注目されています。
具体的には、テプロツマブは難治性の甲状腺眼症の治療に使われるモノクローナル抗体であり、生物学的製剤と言われるものの一種です。
生物学的製剤は、バイオテクノロジー(遺伝子組換え技術や細胞培養技術)を用いて製造された薬剤で、特定の分子を標的とした治療のために使われています。生物学的製剤は高分子の蛋白質であるため内服では消化されてしまいます。このため点滴あるいは注射で体内に投与します。
テプロツマブの作用機序
テプロツマブは、インスリン様成長因子-1(IGF-1)およびその受容体に対する特異的な抗体です。
IGF-1は、体内でさまざまな細胞の成長や代謝に関与しており、甲状腺眼症では、IGF-1が過剰に活性化されることで眼窩内の繊維芽細胞が異常に増殖し、眼球突出(眼球が眼窩から突き出る状態)や眼球の動きの障害を引き起こします。
テプロツマブは、IGF-1受容体に結合し、その活性を阻害することで、炎症と線維化の進行を抑制します。これにより、眼窩内の炎症反応や組織の過剰な成長を抑え、病気の進行を遅らせることができます。
適応症と治療効果
テプロツマブは、特に中等度から重度の甲状腺眼症を持つ成人に対して適応されます。
甲状腺眼症は甲状腺機能亢進症の合併症として起こることが多く、眼球突出、眼の痛み、斜視、視力障害などの症状が現れます。
これまでの治療法としては、ステロイド療法や放射線治療、外科的手術などがありましたが、テプロツマブは新しい治療選択肢として注目されています。
臨床試験において、テプロツマブは甲状腺眼症の患者において顕著な改善を示しました。特に、眼球突出の減少、眼の乾燥や痛みの軽減、視力の改善が報告されています。また、これらの効果は数ヶ月にわたり持続することが多いとされています。
副作用と安全性
テプロツムマブ療法によるほとんどの副作用は点滴の終了または中止後に消失します。
高血糖が患者の10%にみられ、そのうちの3分の2近くに耐糖能障害または糖尿病の既往がありました。
聴覚障害は、IGFレセプターが内耳に存在することから特に懸念される副作用であり、耳鳴りや聴覚障害は、患者の10%に認められました。
下痢は12%(プラセボ群では8%)にみられたものの、一般に軽度で可逆的でした。
炎症性腸疾患はテプロツムマブ治療の相対的禁忌とされていますが、これは第2相試験で1人の患者が炎症性腸疾患の増悪を、もう1人の患者が外科的介入を必要とする新規の大腸炎を発症したためです。
テプロツムマブ治療によるその他の顕著な副作用は、吐き気(14%)、脱毛症(11%)、味覚異常(8%)、頭痛(8%)、皮膚乾燥(8%)であり、体調が変化してしまう方がやや多いことが知られています。
非活動期への治療
テプロツムマブは主に活動性の甲状腺眼症(TED)、特に炎症があり進行している場合に使用されます。
テプロツマブは、IGF-1受容体に結合し、その活性を阻害することで、炎症と線維化の進行を抑制します。これにより、眼窩内の炎症反応や組織の過剰な成長を抑え、病気の進行を遅らせることができます。
しかし、炎症が沈静化し、病態に継続的な変化がない非活動性甲状腺眼症や安定した甲状腺眼症に対しては、残念ながら一般的にテプロツムマブは適応となりません。
病勢が固定化した後は、患者さん固有の症状やニーズに応じて、眼窩減圧手術や眼瞼手術、斜視手術など外科的治療を考慮する必要があります。
テプロツムマブの費用
テプロツムマブ治療の費用は、特殊な生物学的治療であることを反映して、かなり高額になります。
1コースの治療費用: テプロツムマブ療法の1コースは約6ヵ月間にわたって複数回の点滴が行われ、その費用は米国では約30万~40万ドル(日本円で約5000万円)です。
点滴1回あたりの費用: テプロツムマブの1回あたりの点滴費用は一般的に約2万~3万ドル(日本円で約300~500万円)です。標準的な治療計画では、負荷投与後に3週間ごとに維持投与を行い、合計8回の点滴を行うとされています。
日本での料金がいくらになるのかまだ未定ですが、かなり高額になることは間違いがありません。
テプロツムマブは日本で保険適用になるの?
このように高額な薬であるために、医療保険がカバーしようとすると医療費負担増につながります。
このため米国ではテプロツムマブ使用には条件があり、以下のようなものです。
以下の全てを満たす必要があります
– 活動性の甲状腺眼症(TED)を伴うバセドウ病と診断され、罹患眼で臨床活動性スコア(CAS)が4以上である。
– 中等度から重度の活動性甲状腺眼症(TED)であり、以下の少なくとも1つを伴う:
o 瞼が2mm以上後退している。
o 中等度または重度の軟部組織病変
o 人種および性別の正常値より3mm以上の眼球突出
o 複視
および
– 内服または点滴ステロイドに対する治療不耐性がある、もしくは治療したが無効であった、もしくはステロイド使用が禁忌である場合
– そして以下のいずれか
o 患者が甲状腺機能正常である[T3およびT4値が正常範囲内]。
o 軽度の甲状腺機能低下症または甲状腺機能亢進症があり、甲状腺機能を正常に保つための治療を受けている。
かつ
テペザが内分泌専門医または眼科専門医により処方されている。
テペザは、他の生物学的免疫調節薬と併用されていないこと。
米国食品医薬品局(FDA)が承認した添付文書に従った投与であること。
一生涯に最大8回までの投与が許可され、患者の生涯において8回を超えてテペザを継続使用することは証明されておらず、医学的に必要ではない。とされています。
かなり適応が限定されていることが分かりますね!
適応を限定しないと医療費が枯渇してしまうのでしょう笑い泣き
以上、日本での発売間近のテプロツムマブ(商品名テペッツァ)について解説しました!
参考になれば幸いです!