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オキュロが眼形成手術に顕微鏡を使う理由

我々は当院で行っている全ての眼形成手術に顕微鏡を使用しています。
一般的には顕微鏡を使わずに、裸眼もしくは使ってもルーペ程度なのですが、我々は顕微鏡を使って高精細な手術を目指しているのです。僕は海外の眼形成医師たちが700人以上所属しているグループに入っているのですが、その中で顕微鏡はいらないよねルーペで十分だよねという投稿があったので反論しました。以下に、その文面を書きたいと思います。
我々は年間1万件以上の手術件数を誇る眼形成専門クリニックグループです。日本全国に5院を持ち、所属ドクターは20名以上です。手術は眼形成手術のみ行っており、全ての手術が顕微鏡下に行われています。顕微鏡を使うメリットを下記に挙げます。正直なところ、手術用ルーペに顕微鏡が負けるところはほとんどありません。あえていえば初期投資くらいでしょうか。それでも大した値段ではなく、他の機器に比べたら非常に安価です。以下に顕微鏡がルーペに勝るメリットを列挙します。
1.解像度が高い
当たり前ですが顕微鏡は解像度が高いです。これにより非常に細い血管、神経、そして瘢痕を見分けることが可能です。光学顕微鏡が発明されて微生物が発見され、電子顕微鏡が発明されて、ウイルスが発見され見分けられるようになりました。組織の中を詳細に見分けることで今までできなかった手術が可能になります。その一つが、眼窩脂肪減圧です。我々は筋円錐内脂肪まで切除することが可能です。なぜなら失明を回避するために視神経やその栄養血管を見分けることが出来るからです。解像度が高いことはデメリットではありません。
2.視野を全員が共有できる
当院は毎年2-3名のフェローが入職するグループです。つまり新人医師の教育が非常に重要になります。国際フェローの時に思ったことであり、皆さんも新人のころに思ったことだと思うのですが眼窩手術の場合には序列が下の新人医師はどこでどのような手術がされているのか全くわかりません。術野が狭すぎるからです。直視でしか手術が出来ないというのは非常に非効率だと思います。顕微鏡では大画面のHDモニターで新人医師も、麻酔科医も、手術ナースも、外回りスタッフもすべての情報を共有することが可能です。オペ室にいる全てのスタッフが手術の進捗を共有できることはメリットしかありません。
3.首の問題が起きない
皆さん眼科医なのでお分かりだと思いますが、眼形成以外の眼科手術医は眼科用顕微鏡を使用しています。私の上司はKishi’s pocketで有名なProf. Kishiですが75歳の彼はまだ硝子体手術を行っています。顕微鏡の場合には正面視で手術を行うことが可能であり、つまり首の問題が起きづらいのです。これは職業寿命を伸ばすことにつながります。望まれない早期リタイヤを防ぐためにも早いうちからの顕微鏡使用が勧められます。
以上が大まかな顕微鏡を眼形成手術に使用する利点です。我々が使用している顕微鏡はLeica M320という顕微鏡です。これは眼科用顕微鏡と異なり自由な角度に変えることが可能であり希望があれば水平0度にすることも可能です。顕微鏡操作にも慣れが必要だと思いますが、我々は眼科医ですのでそれほどの違和感は感じないと思いますし、我々のフェローはすぐに習熟し、顕微鏡無しに手術をすることは出来ない身体になっています。
長くなりましたのでこの辺で終わりにしますが、天動説を唱えていても日常生活は送れますし、ブラウン管テレビでニュースを見ていても人生は進んでいきます。固定電話を使用していても太陽は上り、馬車に乗っていても風が完全に止むことはありません。同じところに固執することも良いのですが、世の中の進化を俯瞰した目でとらえる視点は非常に重要だと思っていまして、僕は個人的に眼形成手術の次世代の主役は顕微鏡手術になると確信しています。内視鏡手術も同じように技術の進化の一部ですね。世界は変化しています。時代の変化を読んで、そこに全集中することです。偉大な先輩たちがすでにやっていることです。ビルゲイツやスティーブジョブズ、イーロンマスクを考えたらわかりますよ。後から始めるなら明日から始めたほうが良いですよ。
 
  
  
 


