公開日:2024.08.20
最終更新日: 2024.10.08
下眼瞼があっかんべーに
なりやすい理由③
次に2つ目の瘢痕です。
眼瞼の内部の組織に瘢痕化が起きると下眼瞼が下に引っ張られてしまいます。
まばたきの時に動くのは上眼瞼だけだと思っている方も多いと思うのですが実は違います。
下眼瞼も上方に偏位し上下の眼瞼が協働して目を保護しているのです。
ですから下眼瞼が瘢痕化して動かなくなってしまうとまばたきが正しく出来なくなってしまいうので目が閉じられなくなってしまうのです。
この瘢痕化、いままでたくさんの患者さんを診てきた経験から、ほとんどの症例で“眼窩隔膜”に起きています。
眼窩隔膜が瘢痕化するとあの薄い眼窩隔膜がガチガチになってしまい、まぶたが下に引っ張られ、あっかんべーの状態になるのです。
では瘢痕化が起きる原因はなんでしょうか??
それは“侵襲”の一言に尽きます。
たくさんの操作を行うと組織はダメージを受けます。細胞一つひとつがダメージを受けたり壊れたりすると、内部から炎症を起こす物質が漏れ出ます。炎症を起こす物質が多ければ多いほど、術後に腫れます。
腫れるだけでなく、赤くなって痛みも出ます。
これは術後すぐに起きる変化ですね。
だんだん炎症は収まっていきますが、その過程で組織は瘢痕化し、固くなっていきます。
この瘢痕化が下眼瞼では眼窩隔膜に起きるのです。起きるのですが圧倒的に眼窩隔膜に起きやすい。これまで見てきた瘢痕によるあっかんべーの人はほとんどが眼窩隔膜の瘢痕化が原因だったのです。
瘢痕化を起こさないためにはどうしたら良いのか
それは侵襲を少なくすること、に尽きます。
当たり前ですよね、、、侵襲を少なくすればいい
壊れる細胞の数を少しでも減らすこと
それに尽きます。
でもこれがまた難しいのです。
侵襲を少なくするには、二つの要素があります。
それは手術手技で侵入する部位と、手術にかかる時間です。
人体には、筋肉、血管、神経、脂肪などそれなりの意味のある構造が存在します。
そしてそれらの構造の間には結合組織というものが存在して構造と構造を繋いでいます。
この結合組織は線維であって細胞はほとんど存在しません。手術で組織の内部に入った時にこの構造物へのダメージを最小限にし、出来るだけ結合組織の内部を進入していくことこれによって組織へのダメージを最小限にすることが出来ます。
ただし言うのは簡単ですが、やるのは難しいんです。そもそもですが、顕微鏡を使って眼瞼の手術をするドクターはほとんど存在しません。大体は肉眼か使ってもルーペです。
それであれば構造の間の結合織だけに入るなんてことは出来ないのです。
結合織に入れなければ、余計な構造物を切ることになり、それは細胞のダメージになります。
細胞のダメージになれば侵襲となり、瘢痕化の原因となるのです。
まずこれが第一点
それから手術時間が長くなると、壊れる細胞が多くなりますから手術時間は短い方がよいのです。
僕が裏ハムラをやると、順調にいけば30分くらいで終わります(先日25分で終了しました)。
でも他の施設で3時間かかった、なんて話はザラにあります。
当院で研修中のドクターでも1時間半くらいかかります。
当たり前ですが、3時間組織をいじられ続けていたらどんどんボロボロになっていって細胞は壊れてしまいます。
30分で終わる僕の6倍の時間がかかっているので、少なくとも6倍の細胞が壊れているはずです。
さらに言えば、解剖学的に構造物と構造物の間の部分に入れていないからこそ時間がかかると思えば、構造物に迷入してしまっている以上、さらにもっと多くの細胞が壊れていることになります。
手術時間の短さというのは、雑だから時間が短くなるということではなく、しっかりと要点をつかんで、最短距離が分かっているかどうかにかかっているということなのです。
もちろん雑にやっても短くなるかもしれませんが、間違った場所を切ればその分出血が増えて時間がかかるようになってしまうのでやはり最短距離を進めるかどうかが時間短縮できるかどうかのカギになります。
結論ですが、下眼瞼の手術をしてあっかんべーを作らないようにするために必要なのは
1.皮膚を取らない、取りすぎない
2.適切な構造に侵入し、余計な侵襲を作らない
3.手術時間は出来るだけ短くする
この3点に集約されるということです。
video {
width: 100%; /* 動画をレスポンシブ化 */
max-width: 400px;
}
詳しくみる
公開日:2024.08.19
最終更新日: 2024.10.04
下眼瞼があっかんべーに
なりやすい理由②
今回の投稿は前回からの続きです。
まだ読んでないかたは前回の投稿を読んでからこちらをご覧ください。
では先に挙げた2つの原因について見ていきましょう。
まず1つめですが、皮膚の過剰切除についてです。
上眼瞼は年齢とともにたるみが増えていきます。
下眼瞼も同様なのですが、上眼瞼とは条件が違います。
それは皮膚が増えるのと同時に、頬のたるみが増していくということです。
何が言いたいかというと、加齢に伴って頬のたるみが増す分、重力によって頬が下がっていくのです。
だから下眼瞼の皮膚が増えたとしても、差し引きすると上眼瞼のように皮膚が余剰にならないということです。
この重力によって、という言葉がカギになるのですが、手術の時というのはベッドに寝た状態でデザインを行います。ベッドに寝ているこの時には頬に重力はかかりません。
よって頬が起きている時よりも上がっているのですね。
術者にとっては頬が上がっていることに気付かなければ、より皮膚が余っていると誤認しがちな状態になっているのです。
これが皮膚を取りすぎてしまう理由です。
この状態でぴったりに皮膚を切除すると起きた時に頬が下がりますから、その頬の重力がダイレクトに下眼瞼にのしかかることで先述のおデブさんのハンモック状態になってあっかんべーになってしまうのです。
これを防ぐにはどうしたらよいのか
これには下眼瞼皮膚を切りすぎないということに尽きます。
というか出来るだけ下眼瞼の皮膚は取らない・しないことです。
我々のグループでは目のクマの手術を行う時に下眼瞼皮膚を出来るだけ取らないように気をつけています。
いわゆる裏ハムラという手術を勧めているのですね。
皮膚から入る表ハムラを行う時でも、最小限の皮膚切除しか行いません。
また表ハムラの場合には必ず眼輪筋を傷つけてしまいますから、筋が一時的・部分的にでも眼輪筋は麻痺を起こします。これもまたあっかんべーの原因となるのですね。
ですから僕は表ハムラよりも裏ハムラを勧めています。
当院では基本的に裏ハムラを行っていて、皮膚の切除・切開はおこなっていないのです。
もし皮膚弛緩が気になるようなら3か月後に追加切除しています。
これは術後に起きる外反を避けるためなのです。
ただし裏ハムラにもデメリットがあります。
それは術野が狭いので技術が無いと出来ない、ということです。
狭い術野から何かを行うには、内部の構造をよく知らないといけないのですね。
直接見ることが出来ない部分もありますから、解剖だけでなく、内部の操作によって組織がどのようになっているか分かっていなければいけないのです。
つまり、技術、と、経験、の二つが必要になります。
表ハムラであれば、直視することが出来るのでいろいろな操作を行うことは簡単なのです。
裏ハムラだと直視できない部分があるのです。
裏ハムラは技術を必要とする、これが裏ハムラを行う医師が少ない理由になります。
詳しくみる
公開日:2024.08.18
最終更新日: 2024.10.04
下眼瞼があっかんべーに
なりやすい理由①
ハムラ後にあっかんべーになる原因
当院では下眼瞼の術後あっかんべー(正式には眼瞼外反といいます)の修正手術も行っています。昨今、大手美容外科がこぞって目のクマの手術を宣伝している関係で下眼瞼の手術の件数が大きく増えているのだと思います。
上眼瞼と下眼瞼というのはミラーイメージと言われているのですが、解剖学的構造が似通っているので理解しやすいのですね。
ただし上眼瞼と下眼瞼では大きく異なる点があります。それは重力のかかり方です。
上眼瞼にかかる重力は眼瞼そのものや眼瞼の皮膚をそのまま真下に引っ張る力として働きます。
ですから垂れた分だけ切除すればいいのです、非常に簡単な話です。術後に眉毛が下がってきて再手術する必要性が出ることも多く、つまり低矯正になりやすいのですが、基本的にはやりすぎることはほとんどありません。
一方で下眼瞼にかかる重力は非常にやっかいです。下眼瞼は下眼瞼だけの重力を支えているのではないのです。その下にある頬部の皮膚・軟部組織すべてを支えなくてはいけません。そこそこ重量のある構造が下眼瞼の下にあるということを想像してください。
一方で下眼瞼を上に引っ張る力のある組織というのはわずかに外眥と内眥に腱があるだけです。例えて言えばハンモックみたいな構造になっています。通常であれば下眼瞼だけの重力を支えているだけなので、人の乗っていないハンモックを想像してもらえたらと思います。
とりあえず頬という非常に重量のある組織が下眼瞼の真下にあり、下眼瞼は目じりと目頭の非常に心もとない構造で支えられているということを理解してください。
その上で下眼瞼の皮膚を切りすぎたり、内部が瘢痕化したりすると、それまでは骨や側頭部の筋膜などにぶら下がる形になっていた頬の組織の重量が直接下眼瞼にかかるようになるのです。
下眼瞼はハンモックみたいな構造になっていると書きましたが、ハンモックような構造なので下にひっぱる力には非常に弱いのですね。ハンモックに超肥満の人が乗ったような状態を想像してください。
ベッドの足など、中央に重量を支える構造があればいいのですが、ハンモックにはおデブさんは乗っちゃダメですよね。
両側にある支柱が壊れちゃいますし、壊れておデブさんは地面にたたきつけられてしまいます。
まさに、これが下眼瞼が外反になりやすい理由になります。
詳しくみる
公開日:2024.08.09
9月の休診日について
9月の休診日について
当院では、9/10(火)から9/11(水)は医師海外学会により、休診を予定しております。
9月10日(火)
休診
9月11日(水)
休診
休診日カレンダー
詳しくみる
公開日:2024.07.19
最終更新日: 2024.10.04
キズが消える眉下リフトの
術3か月後
眉毛の下で皮膚のリフトを行う手術があって、眉下リフトという言われ方をされたりします。
体表にキズが残るのでいかにきれいに縫うかが大事なのですが、
術後3カ月検診のモニターさんがいらっしゃったので
動画を載せておきますね!
video {
width: 100%; /* 動画をレスポンシブ化 */
max-width: 250px;
}
2023年 手術実績 11,491件 (2022年1-12月)
うち眼瞼下垂手術 6,241件
詳しくみる
公開日:2024.07.09
最終更新日: 2024.07.16
1,281の医療機関から紹介いただいていました
1,281の医療機関から紹介いただいていました
最近というかずっとですが、HPの見直しを行っています
HPの閲覧数って、コロナ前までほとんど変化しないものだったのですが
コロナが明けてからHPの閲覧数が上下するようになりました
どうやらGoogleがAIを入れて順位を決めているのが理由らしく、頻繁に修正する必要に迫られたのですね
それでいろいろと修正をしているのですが、トップページにいくつの医療機関から紹介状を頂いているかを書こうと思い、今までに紹介いただいた医療機関を調べたのですね
そうしたら、なんと、、、、、
1,281件もありましたwww
ここには名だたる大学病院も入っています
これは眼形成という分野が後発であり、大学で専門で行える人材がいないということを指します
誰かが立派な医師になるためにはどこかで教育を受けないといけないのです
親がいなければ子供も育たないのです
僕が眼形成の勉強を始めた15年前には聖隷浜松病院でしか研修を受けることは出来ませんでした
聖隷浜松が全国の大学から医師を受け入れて、それぞれの大学で専門外来をやればよかったのですが
医師も職業選択の自由がありますから、時間がかかって面倒なことが多い眼形成という分野をやろうと思う人はほとんどいなかったのです
みんな割の良い、白内障手術や硝子体手術を目指し、眼形成を勉強しようとは思わなかったのですね
ですから全国の大学病院で眼形成の専門家がいるところは非常に少ないのです
10大学に1つくらいしかない
東京だと、慶応大学しかいません
だから眼形成関連の患者さんがいると大学病院からも紹介いただくのです
そして大学病院に眼形成専門のドクターがいないので、大学病院で育った眼科医で眼形成が出来る医師がいない
つまり大学を出て開業した先生たちは眼形成が出来ないのです
ですから日本には眼形成手術が出来るドクターはほとんど存在しないのですね
数が少ないので眼科医の中では非常にマイナーな位置にいるわけですが(笑)
その分、皆さんから紹介をいただくことが出来て、なんとかやっていけているのです
その分、全国から眼科医を集めて育て、眼形成外科医を全国にバラ撒いて、恩返しをしていきたいと思います
皆さん、いつもご紹介ありがとうございます!!
※読んで勉強になったり、面白かったと感じたら、いいね!をお願いいたします!
ツイッターなどで拡散していただけるとさらに嬉しく思います
2023年 手術実績 11,491件 (2022年1-12月)
うち眼瞼下垂手術 6,241件
元 涙道涙液学会 理事
元 群馬大学 非常勤講師(2014-20)
元 帝京大学 非常勤講師(2017-19)
元 アジア太平洋眼形成学会 理事(2010-18)
オキュロフェイシャルクリニック東京 中央区銀座1丁目ビル8F
03-5579-9995
https://www.oc-tokyo.com/
MAPはこちらhttps://goo.gl/maps/FHdXKbJWcGtzU2fs6
オキュロフェイシャルクリニック京都(NEW)
0120-47-8346
https://www.oc-kyoto.com/
MAPはこちらhttps://maps.app.goo.gl/6USXGtCSPw5FUBLG6
オキュロフェイシャルクリニック大阪
0120-219-609
https://oc-osaka.com/
MAPはこちらhttps://goo.gl/maps/NCCpbxA1mqxNWbZ2A
まぶたとなみだのクリニック千葉
043‐307-7781
〒260-0015 千葉県千葉市中央区富士見1丁目1−13 JS Bldg 6階
MAPはこちらhttps://goo.gl/maps/heHEaADnoo7o1Tp9A
新前橋かしま眼科形成外科クリニック 前橋市古市町180-1
027-288-0224
http://www.kashima-oc.com/
MAPはこちらhttps://goo.gl/maps/vBW1QXwt6y1VevAo8
山本美憂選手との対談はこちら
https://youtu.be/OHHnJZxfziw
2019年11月10日のバセドウ病眼症講演会の内容はこちら
https://youtu.be/kxH9sgrlt0A
東京MXで紹介されました
https://youtu.be/eE2yMVMhW0U
OurAgeにバセドウ病眼症の治療を特集していただきました
https://ourage.jp/column/karada_genki/more/187841/
バセドウ病眼症に悩んでいる方はどうぞ
「1時間で分かる 甲状腺眼症入門パンフレット」
https://oculofacial.page.link/FoB
現物
https://oculofacial.page.link/pamphlet
kindle版
https://www.amazon.co.jp/dp/B07MS9HNSH/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_NJ8pCbV9B21VS
詳しくみる