BLOG医院ブログ
へこんだ眼(眼球陥凹)への治療~眼窩骨折整復術

へこんだ眼(眼球陥凹)への治療
「眼窩骨折整復術」
いままでのブログでお示しした通りバセドウ病眼症による眼球突出への治療は、おそらく日本でダントツに手術をやっています。最近は遠方からもいらしていただき、先ほども九州からお問い合わせをいただきました。
凹ませるのは得意、では逆はどうか。実は眼球陥凹に対しての治療も得意にしています。
眼窩骨折は骨の減圧術とは逆に、外傷(ケガ)によって目の周りの骨が折れて、眼球が凹んでしまった状態を指します。
「眼球陥凹(がんきゅうかんおう)」とは?
「眼球陥凹(がんきゅうかんおう)」と読み、「陥凹」とは、へこんだ状態やくぼんだ状態を示す医学用語です。つまり、眼球陥凹とは、目がへこんだ状態やくぼんだ状態を指します。
外傷はなんでもあり得るのですが、殴り合いの喧嘩、体育のマット運動で自分の膝があたったり、スポーツで競り合ったときに他人の肘や頭が当たったり、野球のフライを取ろうとしてボールが目に当たったり…
多種多様な理由で眼窩骨折が起きるのですが、問題はしっかりと治せるドクターが少ないことです。
眼窩の手術を集中して経験できるような施設はほとんど存在しないため、経験が蓄積されないままになってしまうのです。
眼窩骨折の原因について
これらの原因は目に衝撃を受けたために、眼の周囲の奥の方の骨が折れて、眼の奥の筋肉や脂肪などの組織が移動してしまうことです。
これは押し入れに綺麗に布団が入っている状態に例えると、眼窩骨折では襖が倒れ布団が外に飛び出している状態と言えます。
その時に筋肉が引っ張られればダブって見える症状になり、脂肪などの目の後ろの組織が脱出すれば目が凹んで、小さくなってしまいます。これが眼窩骨折の主たる症状です。
また亀裂骨折が起き、その部位に組織が挟まれると閉鎖型骨折という状態になり、血のめぐりが悪くなって組織が壊死を起こしてしまうため早期の手術が必要になります。
眼窩の組織を
元の位置に戻すことが大事
押し入れの中にある布団で例えると
- 
1.正常時

 - 
2.綺麗に整頓されている

 - 
3.布団が外へ飛び出す

 - 
4.眼窩骨折の状態

 - 
5.眼窩骨折の治療
  
ドクターが勘違いしがちなのですが、眼窩骨折で大事なことは骨を治すこと、ではありません。眼窩の組織(内容物)を元の位置に戻すことが大事なのです。
よくある手術での間違いとして骨の代わりになる人工のプレートを折れた骨の上に置いてくるだけというものがあります。
これだと何も戻せていないので手術をやった意味がありません。骨を治すためにプレートを入れる、ということを条件反射のように行うと何一つ改善の無い状態になってしまうのです。
正しく治療しないと、
眼球陥凹がなかなか治らない場合も
また折れた骨から脱出した眼窩脂肪も適切に元に戻す必要があります。
骨は綺麗に治っていても脂肪をそのまま置いてきてしまったため、眼球陥凹が治らず悩んでいる方の診察をしたことがあります。
ありとあらゆる手術後の患者さんを診てきましたが、綺麗に治せているなあと思ったのは一握りでした。
(みんな、問題あるから来院するので当然なのですが)
実際の眼球陥凹(がんきゅうかんおう)の
治療症例
約20歳女性・転落事故
自宅マンション5階から転落、顔面多発骨折にてB大学病院形成外科で整復手術。半年後に眼窩骨折整復術と下眼瞼の陥凹に対して脂肪移植を施行しています。
左眼球陥凹が治らず浜松のC病院、群馬県のD病院を受診するが手術を断られ、最終的にD病院から当院へ紹介受診となりました。
B大学病院で2回手術をされていますが、左眼の重度の眼球陥凹が残存しており、左右非対称の顔貌となってしまっています。また下眼瞼へなぜか脂肪移植されているためこれも左右差を助長する原因となっています。
CTでは再建手術を2回されているものの、骨壁を治すことが出来ていないため、眼窩の断面積が縮小していません。これが眼球陥凹の大きな原因でした。
手術は白目(結膜)の切開から行ったため、皮膚に傷は残っていません。人工骨で足場を作り、その上にプレートが乗せました。
術後のCTを見ると眼窩の断面積が正常である右に近づいているのが分かります。
へこみ目、くぼみ目の
治療症例
人工のプレートを挿入した症例
| 術前 | 眼球陥凹があり、わずかだが上眼瞼に影が出来ており、眉毛よりまぶたが凹んでいる。 | 
|---|---|
| 術後 | まぶたが膨らみ、影が無くなり、眉毛よりまぶたが突出している。 | 
ヒアルロン酸を注入した症例
| 術前 | 上眼瞼がくぼみ、影が出来て眉毛の位置よりも眼球が後ろにあることが分かる。 | 
|---|---|
| 術後 | 眼球が突出して影が消失し、眉毛の位置と眼球の位置がほぼ同じになっている。 | 
治療料金の目安
| 3割負担 | 1割負担 | |
| 眼窩(がんか)骨折整復術 | 約90,000円 もしくは高額医療費にて計算  | 
ー | 
| プレート挿入(片眼) | 1,320,000円 | 
|---|---|
| ヒアルロン酸注入 | 1本 95,700円〜 | 
上記の金額はすべて税込表示です。
まずはお気軽にご相談ください
眼形成手術の研修を最初に受けた聖隷浜松病院・眼形成眼窩外科では非常に多くの眼窩骨折を短期間に集中して手術させていただきました。
そのおかげで眼窩骨折の手術はある程度安定した結果を出すことが出来るようになりました。
いままでに眼窩骨折がきれいに治らず、眼球陥凹が出てしまった方をたくさん見てきました。
眼窩骨折による眼球陥凹で悩んでいる場合には是非ご相談ください。
「へこみ目(眼球陥凹)」を詳しく見る
「眼窩骨折手術」を詳しく見る
「ドクター紹介」を詳しく見る
著者情報
鹿嶋 友敬
Tomoyuki Kashima/ MD, PhD
患者さんへのご挨拶
これまで10年以上にわたり日米通算1万件以上の手術を行って参りました。 今までに私が培ってきた専門的な知識や経験を日本でお困りの患者さんの為に提供していきたいと思っています。
経 歴
| 2002年 | 群馬大医学部卒 群馬大学  眼科学教室  | 
|---|---|
| 2004年 | 伊勢崎市民病院 | 
| 2005年 | 群馬大眼科 | 
| 2007年-09年 | 聖隷浜松病院  眼形成眼窩外科へ国内留学  | 
| 2009年 | 群馬大にて眼形成外来を開設 | 
| 2012年 | 学位取得  群馬大学眼科 助教  | 
| 2010年-18年 | アジア太平洋眼形成学会理事 | 
| 2015年-16年 | カリフォルニア大学 ロサンゼルス校へ留学  | 
| 2017年 | 新前橋かしま眼科形成外科 クリニック 開院  | 
| 2018年 | オキュロフェイシャルクリニック 東京 開院  | 
| 2019年 | The NewYork Times特別企画「Next Era Leaders 2019」選出 | 
| 2020年 | アメリカ眼形成学会(ASOPRS)会員 | 
海外・国内活動
| 2009年 | Singapore National Eye Center | 
|---|---|
| 2010年 | アジア太平洋眼形成外科学会 北京  Invited Speaker  | 
| 2011年 | ヨーロッパ眼形成学会 コモ(イタリア) | 
| 2012年 | 
世界眼科会議 アブダビ  Invited Speaker Asia ARVO シンガポール Invited Speaker APAO 釜山 Invited Speaker アメリカ眼科学会 シカゴ Invited Speaker  | 
| 2013年 | APAO ハイデラバード  Invited Speaker アメリカ小児眼科学会 シンガポール Invited Speaker ヨーロッパ眼形成学会 バルセロナ  | 
| 2014年 | 世界眼科会議 東京 Invited Speaker  アジア太平洋眼形成外科学会 デリー アメリカ眼形成学会 シカゴ  | 
| 2015年 | APAO 広州 Invited Speaker | 
| 2016年 | KSAS(Korea Society of Aesthetic Surgery) meeting in Seoul  ITEDS(International Thyroid Eye Disease) meeting in London APSOPRS & JSOPRS joint meeting session chair iseminer 甲状腺眼症の手術治療など講演多数。  | 
| 2017年 | アメリカ眼科アカデミーinstructor、 韓国眼形成学会invited speaker、 中国眼形成学会invited speaker  | 
| 2018年 | アジア太平洋国際学会APAO invited speaker | 
| 2019年 | アジア太平洋国際学会APAO invited speaker、 ITEDS invited speaker、 OPAIC invited speaker  | 
| 2021年 | アジア太平洋眼形成学会 invited speaker | 
| 2022年 | アジア太平洋国際学会APAO、 ヨーロッパ眼形成学会、 米国眼形成学会  | 
| 2023年 | アジア太平洋国際学会APAO、 ヨーロッパ眼形成学会、 米国眼形成学会、タイ眼形成学会、 UCLA解剖実習コース、 ポルトガル解剖実習コース  | 
監修・著書
 監修
外眼部の周術期のケアに
メオアイス
名古屋眼鏡 まぶたやその周囲の手術のあとの”腫れ”や”痛み”を防止する目的で作られた医療用商品です。
 著書
責任編集者
超アトラス 眼瞼手術
全日本病院出版 眼科と形成外科のコラボレーションを目指す、意欲的なアトラスが登場! オールカラーの連続写真、詳細なシェーマでわかりやすく解説されています。
 著書
責任編集者
ここからスタート! 眼形成手術の基本手技
全日本病院出版 眼形成外科を目指すドクターへの入門書。手術の道具や手技を詳細に解説しています。








